食べ物本について、いくつかレビューを書いたが、最近のものだけでなく、古典といわれるものもとりあげてみよう。
まず、今回は、古典中の古典「食は広州にあり」。
著者は、経済小説から財テクまで幅の広い邱永漢さんである。
この作品。解説をみると昭和29年から32年にかけて雑誌に連載されたものとのこと。しかも、吉田健一「舌鼓ところどころ」、檀 一雄「檀流クッキング」といった作品より前に発表されており、食べ物本、グルメ本の先駆け的存在といってよいだろう。
始まりは「食在広州」という章から。衣食女のうちどれを選ぶかといったら、中国男性は迷わず「食」を選ぶだろう、といったところからスタートしている。
このスタートから見ても、旨いものの紹介本だけではなく、食べ物を材料にしたエッセーとしても考えたほうがよい本であることを窺わさせる。
例えば、
子豚の丸焼きは、中国のとある地方で偶然、豚小屋が火事になり焼けた豚をさわった指を口にしたら非常に旨かったことから始まったが、その地方では子豚の丸焼きを食べるために家に火をつける輩がでてきた、とかいった与太話があるかと思えば、
日本人は目で食い、西洋人は鼻で食い、中国人は口で食うといった、それぞれの「食」についての概念について語られたり、
十二切れの豆腐のために鶏を二羽つぶしてダシをとる「太史豆腐」や麺の中にえびの子の入った「蝦子麺」などなどの料理の話
おまけに、料理人とみなされて奥さんが入国するビザがおりない、とかいった戦争の傷は癒えかけ高度成長に入りかけている時代を反映した話
などなど
しかも、そこかしこに中国と日本の比較論、あるいは実と虚の比較論がちりばめられているといった具合。
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