「もっと遠く」に続いたアメリカ大陸縦断記の南米篇である。
南米篇は、メキシコから始まる。もちろん、南米にメキシコを入れるのは筆者も躊躇しているが、スペイン人の征服によるアステカ帝国の滅亡から現在までの宗教、風俗、史的体験からして北米とは異なるものとして南米篇にいれたものだという。そういえば、今までのオリンピックの開催国で、オリンピック開催後、国威を著しく落としたのはメキシコだけだ、という逸話をどこかで読んだことがある。
そんなメキシコから始まり、コロンビアまでいたるのがこの南米篇の上巻である。
メキシコに入ると、すぐさま「モクテスマの復讐」に襲われる。とはいっても事件ではない。下痢である。コルテスに滅ぼされたアステカ帝国の最後の皇帝 モクテスマ二世が、メキシコにくるあらゆる外国人に、皮膚の色や国籍おかまいなしに、下痢でたたって歩くのだそうだ。アメリカやヨーロッパにやられっぱなしのメキシコのささやかな復讐というわけか。
メキシコで釣った魚は、タイの一種のワティナンゴとハタぐらいでたいしたことはないが、出会う料理は、捨てたものではない。
「ワティナンゴ・ア・ラ・ベラクルサーナ」という料理は、ワティナンゴという魚に軽く衣と油をつけて熱い油で揚げ、それにトマト、タマネギ、ピメンタなどを入れた熱い透明なスープをかけたものなのだが、その味は
魚は赤いけれども肉は白身で、もろく、高雅である。ピメンタは日本のピーマンにそっくりだけれど、とびあがりたくなるくらい辛くて、食べていると、額からタラタラと汗が出てくるほどである。しかし、香ンばしい油、はんなりとした塩味、気品のある白身のまざりぐあいは、まことに逸品であった
というぐらい旨いもののようだ。