岸本葉子 「「和」の旅、ひとり旅」(小学館文庫)

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おひさしぶりに読んだ、岸本葉子さんの旅本、というか旅エッセイである。 岸本葉子さんといえば、「アジア発、東へ西へ」や「旅はお肌の曲がり角」あたりから旅本として読み始めたのだが、最初の頃の、元気な北京留学娘をほうふつとさせるものから、年を経るにつれ、段々と「上品」になってきているような感じがする。

そういえば、表紙カバーのお写真も、(大変失礼ながら)ちょっとお年を召されたセレブの奥様といった雰囲気を醸し出されているのである。でも、キレーで賢そうな人だな、と思わせる風情十分である。

とまあ、容姿の話はさておき、この本の構成は
自分の中の「旅」を問い直すような内への旅を思わせる「「私」と出会う」
日本のあちこち、とはいっても騒々しい観光地ではなく、北海道・ニセコ、安曇野、天草などなどの、謂れや風情のありそうなところが多い旅行記、「元気をもらいに」と「時間を超えて」
季節の移り変わりを、花や野草をネタにとりあげた「季節を感じる」

旅行記の中で、おろ、と思ったのが「南大東島」



この島、人が住み始めたのが1900年(明治33年)。鳥島のあほう鳥の羽を売って巨万の富を築いた玉置という人が、製糖業をはじめるために企業ぐるみで移住をはじめ、島は玉置氏の私有。島内では「玉置券」というのが貨幣がわり流通し、教育・医療・郵政・警察もすべて会社が行っていたというもの。


うーむ。ジュラシックパークやロボコップなんかででてくる、巨大企業みたいではないか・・・。ここで、あやしげな研究開発が行われていれば、まさにそのものなのだが、現実は、地道に製糖業が行われていた模様。
ちょっとがっかりだが、なんとなく訪れてきたくなるところである。




しかし、この本のお奨めは、こうした旅行記より最後の「季節を感じる」のこれまた最後の方の野草や山菜をテーマに季節を描くところ。


この人、確か、食エッセイも達者だったように思う。

「蕗」「うど」「あいこ」「みず」「こごみ」など、私より年下なのに、ちょっと○寄りくさいぞーという印象は否めないのだが、



(こごみを)湯に通すと、空豆のような薄い緑色に変わる。いかにも、春のはじめのお弁当にふさわしい色だ。
 茹で上げた芽は、水をはじいて、つやつやしている。かじると、かすかなぬめりがある。水気をよき切り、たっぷりのかつお節と醤油をまぶす。かつお節が、味をからませるのにちょうどいい。

とか


 下ごしらえした蕗を煮る。蕗だけでもいいが、私はよく厚揚げと炊き合わせる。醤油と酒とだしでもいいし、醤油の代わりにいしるでもいい。いしるは能登半島で作られている魚醤で、発酵臭が鼻につくという人もいるが、煮物などに含ませると、なつかしいような味わいになる。色は醤油よりも薄いので、目ではなく、舌で加減する。
 煮詰めずに、汁に具がひたるくらいで止め、ゆっくりと味をしみこませる。長さが揃った蕗と、いしるの色でかすかに染まった厚揚げが並ぶ鉢を見ると、いかにも春の煮物だと思う。

山菜とか野菜の煮物は、あんまり得意な方じゃないのだが、これはそそられますねー。


旅本ではなく、旅にまつわるエッセイ、食べ物のエッセイ、季節の花のエッセイと思って読んでください。

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このページは、辺境駐在員が2006年2月11日 18:04に書いたブログ記事です。

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