北森 鴻 「触身仏」(新潮文庫)

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「凶笑面」でデビューした民俗学者にして探偵役も果たし、おまけに中性的な美人ときている蓮丈那智シリーズの文庫本2冊目。


収録は
「秘供養」「大黒闇」「死満珠」「触身仏」「御蔭講」
の5作品。


1作目は、那智や助手の内藤がフィールドワークにでかけた先で事件に遭遇する設定だったのだが、今回は大学の構内や対談先など、那智たちのフィールド内で起きる事件がほとんど。まあ、1作目の見事な事件の解決手腕で、怪異自体が尋ねてくるほど、その道では名が売れたってことかもしれない。

ただし、フィールド内でおきるからといって、その事件はごく一般の謎解きではなく、それぞれにこってりと民俗学の味付けがされているので、そうした謎解きの周辺のディティールをこてこて味わうのが好きな人も(私もそうなのだが)満足して読める。

例えば

<供養の五百羅漢>の伝説にまつわる飢饉の秘話であったり、

口中に勾玉を押し込まれて死んでいたアマチュア歴史家の事件の中で語られる三種の神器の謎ときであったりして、

どうかすると、こうした周辺を読むためにミステリーを読んでいるような感覚になるあたり、北森 鴻の絶妙の語り口のなせる技なのだろう。しかも、事件もグロテスクすぎず、民俗学にありがちなコケオドシのおどろおどろしさがないあたりも、また良いのである。

これに収録されている最終話「御蔭講」で万年助手らしかった内藤に講師に道が開けそうになってくる。結論は明らかになってはいないが、那智にふりまわされて苦労を重ねている内藤くんの幸運を期待しておこう。

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このページは、辺境駐在員が2006年12月17日 10:23に書いたブログ記事です。

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