ってな感じで展開する骨董業界ミステリー、とはいっても謎は、贋作とかいったことではなくて、明治期の国家的な陰謀事件(いやー、ひさびさに聞く由緒正しい表現だな)にまで結びついていく、大がかりな謎である。
もっとも、発端は、競り市で、陶子が、青銅鏡(光に透かすとなにやら影がうつる”魔鏡”という、それなりに怪しげなものなのだが)を手に入れたあたりから始まるので、そうした競り市の様子やら、陶子がはめられる素となる絵画の鑑定や贋作の作り方など、骨董業界、美術業界の”裏”的知識も豊富に用意されていて、本筋とは別のそうしたTipsもまた楽しいのが、北森 鴻のミステリーの良いところだ。
本筋は、蓮丈那智シリーズの「凶笑面」に収録されている短編「双死神」と連動していて日本古代の鉄器にまつわる蘇我と物部の対立に隠されている謎とか、明治初期、堺県知事 税所篤の古墳盗掘の真相まで及んでいく。
最後の方の古墳のトリックは、最初に「双死神」を読んでしまった方はネタバレでちょっと残念だろうが、それを上回る、国家的なミステリーが展開されていくので、良いとしてほしい。
しかし、こうした国家的な陰謀というか企みの話を聞くと、明治期の日本というものの脆弱性というか、列強の中にはさまれた心許なさといったものが、なんとなく現代の私にも伝わってくるのだが、一個の銅鏡から、国家的な陰謀までもっていってしまう、北森 鴻の力量はさすがである。
骨董というか古代の文物の蘊蓄を楽しみながら、宇佐見陶子が冤罪を晴らすための獅子奮迅の奮戦にワクワクするミステリーである。

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