北森 鴻 「写楽・考」(新潮文庫)

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異端の民族学者 蓮丈那智シリーズの3作目。

収録は

「憑代忌(よりしろき)」
「湖底祀(みなそこのまつり)」
「棄神祭(きじんさい)」
「写楽・考(しゃらく・こう)」

の4作。

ネタバレすれすれで、ちょっと紹介すると

「憑代忌」は蓮丈先生の不肖の愛弟子 内藤くんの写真がお守りというか、贄がわりに使われているところから始まる話。
本当の事件は、南アルプスの近くの火村家でおこる「御守り様」と呼ばれる人形を巡っての殺人なのだが、ここでは、「憑代」っていうことが推理を狂わせるお話。ちなみに憑代っていうのは、憑代、ひとかた、人形に代理の罰を与えることで、現実の人物に呪いをかける方法なのだそうだ。

「湖底祀」は湖底で発見された江戸時代の神社跡、実は、鳥居の起源を解き明かす重大なヒントが、民俗学的な謎解きに、生臭い、いわゆる地域起こし、ムラ起こしといったやつが絡んできて・・・といった、ちょっと少しばかり曰く因縁があれば、なんでも地域振興にこじつける在り様がチクッと胸に刺さる一編。もっとも、本当の謎は別のところにありますよ、念のため。

「棄神祭」は保食神の話。保食神ってのは、殺害されることで、この世に牧畜や農業、養蚕などの恵みを与える神のことなんだが、舞台は九州の御厨家でおこなわれる3年に一度、塚の上で家護の神像を燃やすという祭祀に隠された謎をとく話。旧家といえども戦争の影響は受けているのは、どこもそうなのだが、その影響っていうのが、ちょっと物悲しさを感じさせるのと、いわゆるシャーマンの保食神としての意外な側面を教えてくれる一編。

さて、最後は表題作の「写楽・考」。この話では、式直男という「仮想民俗学」を唱える研究者があらわれ、今回の狂言回しを務める。で、この式直男の死を巡って蓮丈が犯人と疑われて失踪したりといった騒ぎがおこるのだが、まあそれは誘い水で、大事なところは「絡繰箱」と「べるみー」という画家の正体、というあたり。

そうそう、この話で、蓮丈先生にいつも渋い顔をしている大学の事務局のキツネ目の男、高杉の過去が明らかになるのだが、それはまあ読んでのお楽しみ。

それと、なぜ「写楽・考」なんだ、べるみーと全然関係ないぞ、というところは、話の最後で、どんとでてくる。でも、ちょっとこいつは、最後のどんでんが過ぎるよな、というのが管理人の率直な感想ではある。


まあ、今回もうかうかと著者の手に乗って、最後まで読まされてしまいました。蓮丈那智シリーズ、3作目も良き出来でありました。

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このページは、辺境駐在員が2009年7月 4日 23:24に書いたブログ記事です。

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