この「メイン・ディッシュ」はそのどちらも、というか、登場人物は、劇団・紅神楽の看板女優の紅林ユリエこと「ねこ」と彼女の家に転がり込んできた居候の三津池修こと「ミケ」、劇団の代表の一人で座付役者の小杉隆一(彼は途中で、推理作家に転業する。まるで、作者の分身のような存在だ)といった面々はもちろんユニークなのは間違いないのだが、随所随所にでてくる、ミケさんのつくる料理が、また旨そうでたまらないという、表題そのものを体現したミステリーである。
とはいっても、ありきたりのグルメ・ミステリーではない。大きな筋立ては、「ねこ」さんの劇団周辺の様々な事件と、「ミケ」さんがなぜ風来坊のような暮らしをしているかの謎が、絡まりあって進展する凝ったつくりのミステリーで、構成は
アペリティフ(プロローグ)
ストレンジ テイスト
アリバイ レシピ
キッチン マジック
バッド テイスト トレイン
マイ オールド ビターズ
バレンタイン チャーハン
ボトル ”ダミー”
サピライジング エッグ
メイン・ディッシュ(エピローグ)
特別料理
となっている。
ところが「アリバイ レシピ」や「バッド テイスト トレイン」は、一見、その主筋とは全く関係のない掌編。
で、「これはいったい何の意味があって、はさみこんであるんだ」といった違和感を持たせながら、主筋である「ねこ」さんの劇団まわりの事件が展開し、その中で「ああ、話の中の話なのかな」と一旦安心させながら、最後で、二つの話が、ぴしゃりっと組み合わさる、という展開で、この手練の技には、「うーむ」と唸らざるをえない。
靴の上から痒いところを書くようなレビューになってしまったが、これ以上は、ネタバレがすぎるような気がするので、ここらで今回は止め。
それと、話中の料理の数々の紹介も、今回は封印。
なにせ、この料理のところだけでも絶妙の仕上がりであります。良い仕上がりのコース料理に似た、ミステリーを読ませていただきました。

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