北森 鴻 「支那そば館の謎」(光文社文庫)

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どんな鍵でも開けてしまい、以前は怪盗と呼ばれた「僕」こと有馬次郎は、ひょんなドジから嵐山の奥に位置する大非閣千光寺の寺男になって、堅気の生活を始めている。ところが、どうも事件に好かれているのか、知り合いが悪いのか、京都新聞の文化部の記者で、トラブルメーカーの気のある折原けいが持ち込んでくる事件に巻き込まれて・・・、といった感じの、オーソドックスな設定ともいえる御当地ミステリー。

収録は、
「不動明王の憂鬱」
「異教徒の晩餐」
「鮎躍る夜に」
「不如意の人」
「支那そば館の謎」
「居酒屋 十兵衛」
の6篇

ところが、北森 鴻氏の手にかかると、御当地ミステリーも、普通の御当地ミステリーとはちょっと違った風味が漂ってくるのが不思議。

御当地ミステリーだから、その地の観光地とか名物料理といったネタが、物語の謎を解くキーになるのは、御当地ミステリーの決めごとといってもいいのだが、そのネタが、京都の銭湯の湯船の位置構造とか、鯖棒という寿司、あるいは当日は、一般人が立入禁止になっている大文字焼きの現場の山とか、太秦の撮影場、京都の町屋といった一風変わったものがキーになっていて、ありきたりの観光地やらをとりあげられるより、「京都」の風を感じさせるのが、流石の腕前である。

おまけに、この筆者のミステリーの楽しみといえるのが、作中に登場してくる料理の数々で、例えば
「異教徒の晩餐」の

・・・少年時代を坂東の水に慣れ親しんだ僕としては、やはり蕎麦は関東風に限る。それも脂の乗り切った鴨の胸肉と京葱をごま油で照りつけ、濃い目の出し汁を注いだ《鴨なんば》こそは

といったところとか

「支那そば館の謎」の

まもなく仕上がったのはライスペーパーを揚げて皿に仕立て、海老、セロリ、明石蛸、イエローピーマンを賽の目に切って、和がらしとゴマのドレッシングで仕上げた一品。・・・

といったあたりが、さらに物語の味を引き立てる。

全体にコミカルなタッチの出来なので、3作目から出てくる作者のカリカチュアともいえる水森堅という売れない推理作家もでてくるところも御愛嬌と考えて、お気軽に読みたい一冊である。

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このページは、辺境駐在員が2009年9月13日 13:42に書いたブログ記事です。

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